2020年11月26日(木)に20時~22時で「ベンチャー経営勉強会」をオンラインで開催しました。
当日は、資本戦略とIPOのコンサルタントである佐々木義孝氏をお迎えし、お金と組織と人事の話題についてのコラボ講演会といたしました。
3部構成でお届けいたしました。
【第1部】
高野慎一講演「人と組織でつまづかないベンチャーの組織づくり」
【第2部】
佐々木義孝講演「失敗しない資本政策」
【第3部】
いまのたかの・佐々木義孝鼎談「創業社長という存在」
ここでは、第一部の高野慎一講演「人と組織でつまづかないベンチャーの組織づくり」の概要を掲載いたします。
高野慎一講演録
高野慎一です。
11月26日(木)に行ったウエビナー「ベンチャー経営勉強会」で「人と組織でつまずかないベンチャーの組織作り〜“30人の壁”“100人の壁” その核心的原因と対策」と題してお話ししました。
私のパートの目的は「壁の核心的原因を知ることで、創業者自ら早期に行動を変え、組織の基盤を作り、来るべき壁をできるだけ低くする」ことにあります。時間の関係で対策の全てをお話しすることはできませんでしたが、もっとも核心であると私が考えている原因についてお話しさせていただきました。
人数が増えるとなぜコミュニケーション不全が起きるのか。
私はイギリスの人類学者ロビン・ダンバー教授が提唱した「ダンバー数」をこれに当てはめて考えています。
ダンバー数とは、教授が霊長類の脳の大きさと群の個体数の間に相関関係があることを発見し、これを人間(ホモ・サピエンス)の脳の大きさに当てはめることによって人間が安定的な社会関係を築ける人数は100〜230人、平均して148人としている学説です。(一般的にダンバー数は150人と言われることが多いようです。)
さらに教授は、人間の集団の中での付き合い方や関係の濃さを細かく調べ、5人、15人、50人、150人の段階があるとしています。
5人は家族やもっとも親しい親友、15人は仲の良い友達、50人はクラスの友達、150人は同学年の友達と考えてみると、確かにその間には関係性の差があるように思います。
ここに30人前後、100人前後で訪れる組織の危機の原因が潜んでいるようです。
創業時は数人ですが、30人あたりで社長が1人で全員の状況を把握するのが難しくなります。
さらに100人を超えたくらいから、メンバー同士でも顔と名前が一致しないなどの現象が起き始め相互理解と相互信頼に基づいた人間関係が薄くなっていき、ギクシャクしたり、退職者が急増したりして、組織崩壊に至って一旦企業の成長が停滞します。
その原因究明が「人数が増えたからコミュニケーションが悪くなった」に止まっているため、コミュニケーション量を増やそうとします。
中間管理職を作って組織化したり、人事制度・評価制度を入れたりなどの対策が打たれるのですが、肝心の「行動」が変わっていないのです。
核心的原因が「ホモ・サピエンスの脳の大きさ」だとすれば、組織や制度を作ったところで、創業者はじめメンバーの「行動」が少人数の時と同じでは効果が薄く、場合によっては逆効果になります。
例えば、組織を作っても創業者が全ての報告を求め、全ての決定に関与するのは、気持ちはわかりますが、創業者がホモ・サピエンスである以上、脳の情報処理能力の限界を超えているのです。
対策のキーワードは「縦の役割分担=権限移譲」です。
この行動変容がない限り、組織化という対策を打っても組織はそのまま崩壊に向かいます。
その役割分担は、課題が長期的なものほど上位役職者の役割とし、上位役職者はその時間を捻出するため、短期的な課題についての役割を下位の者に委ねます。
ウエビナーの最後にも申し上げましたが、人数の壁による組織崩壊の原因はダンバー数だけではありません。
時間の関係で他の原因についての説明はできませんでした。
その点だけはご注意ください。