マネージャーへの手紙「マネージャーに昇進されたみなさんへ」

高野慎一のnote

この記事は2020年8月1日に社員数150人を超えた株式会社ツクルバが大きな組織変更を行い、マネージャー職を拡充し、多くの新任マネージャーが誕生したときに新任マネージャー向けに書いたものです。
ある部長からDMで、「マネジメントに関する知識やスキルの研修は多々行われると思うが、その前にマネージャーの心構えやスタンスなどもっとも基本になることを話したい、その材料はありませんか?」というオーダーでした。
そのようなものはなかったので、私が部長として課長を育てたときに言ってきたことを書き下ろしたのが本文です。これを読んだ部長から他の部室長に、そして経営チームにも拡散し、これを元に研修をすることになりました。

いずれ何らかの形で上梓するつもりでいましたが、昨日、Twitterでお顔も会社も存じ上げない新任マネージャーの方からお悩みが寄せられました。何かおすすめの研修はないか、と。何を伸ばすか、何に気づいてもらうかで研修は設計されていますから、Twitterの短文のやりとりでは良いアドバイスができません。そこで思いついたのがこの原稿でした。
マネージャーの基盤になるもの。それはその方の参考になるのではないか、ひいては全国の、新任に限らずマネージャーのみなさんの参考になるのなら幸いだと思い、ここにアップすることにしました。

以下、ツクルバで新任マネージャーに送った原文に一部修正を加えたものです。

マネージャーに昇進されたみなさんへ

みなさん、マネージャー昇進おめでとうございます。
これは私がマネージャーに昇進した部下に、いつも言ってきたことを書き下ろしてみたものです。しかしこれらは通常2〜3年かけて語っている内容、つまりそれぞれの部下の、それぞれの時期の、それぞれの状況により、OJTで語っていることです。
もっと絞ったり、整理したりした方がわかりやすいかと思いましたが、心に響くものは人や時期や状況によってそれぞれに違うものなので、あえて書き下ろしたままにしました。
だからこのすべてをすぐにできるようになるのは困難です。
自分のマネジメントスタイルができてきたなと思うのは、大体3年後です。
少しずつ身につけて自分のマネジメントスタイルを築き上げてください。

一読したら、自分の心に残ったものを3〜5個選んでマークしてください。
まずはそれを身につけましょう。
いつも言っていることですが、身につけるとは無意識にできるようになることです。
身につけるは、知っている、わかっている、できる、の3ステップの先にあります。
勇気を持って1歩目を大きく踏み出し、考えるよりやってみてください。
やってみて迷ったらこれを引き出しから引っ張り出して再読してみてください。
そのとき、そのタイミングで心に響くものがきっとあると思います。

※この後の話の展開でお分かりいただけると思いますが、私はここであえて「マネージャー」ではなく、「管理職」「課長」という言葉を使います。その方が「あなたは何をする人なのか」がわかりやすいからです。

1. 管理職とは
2. 成果を出す
3. 信頼される人になる
4. 人を動かす
5. 人を育てる
6. 経営と現場のリンクピンになる



1. 管理職とは

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■ようこそ、こちらの世界へ
今日からはまるで違う世界に来たと思いなさい。これまでは自分がやるか、やらないかだから結果の責任は自分が取れば良かったが、これからは人を通じて結果を出すことになる。管理される側と管理する側では、責任の重さも見える風景もまるで違う。これまでとは違う世界に足を踏み入れるのだと思って1歩目を踏み出しなさい。

■人は会社の宝。その宝を預かったのだという緊張感を持ちなさい
すべての組織に目的がある。経営が何かを達成したいと思い、限りある「ヒト・モノ・カネ」の中から、それを達成するために必要な分を配分したのが課(組織)だ。だから達成したい何か、すなわち目的がなく作られる組織はない。
経営は課を作り、必要な「ヒト・モノ・カネ」を課長に預ける。「ヒト・モノ・カネ」は無限ではない。限りがあるのだ。経営はそれをどこに振り向けるかを考え、決定する。君が預かった「ヒト・モノ・カネ」は、他に預かりたい課があるのに、君に預けられたのだ。あるいは、他の課から経営が引き抜いて君に預けているのだ。
例えて言おう。もし社員数100人の会社で君が5人のメンバーを預かったのなら、経営は全財産の5%を君に預けたのだ。その分、人数が減って苦労する課があることも忘れてはいけない。
だから課長は会社から預かった「ヒト・モノ・カネ」を、責任をもって管理しなければならない。その責任を感じながら仕事をしなさい。

■預かった「ヒト・モノ・カネ」で成果を出すのが管理職
経営から降りてきた目標を達成するためには、預かった「ヒト・モノ・カネ」だけでは足りないと思う時があるだろう。そのことに文句を言ってはならない。預かった「ヒト・モノ・カネ」を最大限活用して目標を達成してみせるのが1人前の管理職だ。
新橋の居酒屋で「目標達成できないのは部下の能力不足が原因だ」と言って飲んでいるサラリーマンがいる。その発言は、「私には部下を活用する能力がありません」と言っているのと同じ、天に唾するようなものだ。
どうしても足りないと思うなら、経営者が銀行に金を借りにいくように、「預かったらこうやって増やして返すからもっと私に預けてくれ」と経営に提案しなさい。提案が通れば経営は、他の課に預けていた「ヒト・モノ・カネ」を君の課に回してくれる。


■預かったものは大きくして返しなさい
管理という言葉を誤解するな。大切な皿を預かったのなら、割って壊さないように保管して返すのが管理。カネは箪笥に入れて保管するのも管理だが、銀行の管理は増やして返す。ヒトに保管はない。学校に預けたら、成長させて返すのが管理。会社の管理職は、目標を達成することでカネやモノを増やし、預かったヒトを成長させて会社に返す。それが企業における管理職の管理だ。

■管理職のプロになりなさい
営業職は営業のプロ。企画職は企画のプロ。事務職は事務のプロ・・。管理職は管理のプロにならなきゃいけない。
日本の会社では、営業課長がいきなり人事課長に異動するなんてことが起きる。経験のない仕事の課に異動しても、赴任日のその日からリーダーシップを発揮するのが管理職のプロだ。プロ経営者が業種を問わず渡り歩くのと同じだ。その仕事の詳細は3〜6ヶ月でキャッチアップすること。だがリーダーシップはその日から発揮する。それができる管理職になりなさい。

2.成果を出す

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■成果を出すことにこだわりなさい
リーダーがあきらめた時が、チームがあきらめる時だ。リーダーが成果にこだわらなければチームは成果にこだわらない。リーダーは最後の最後まで成果を出すことにこだわり、メンバーに成果を出すことを求めなさい。リーダーのあきらめない姿勢がメンバーを動かす。

■課の存在目的、すなわち課のミッションを考え、語りなさい
目標だけを語っていないか?数字だけを語っていないか?
それだけを語っていたらメンバーは必ず疲弊し、チームの業績は落ち始める。
課の存在目的を語ること。それが「旗印を掲げる」ということだ。旗印を掲げることはリーダーにしかできない。旗印を掲げることはチームを一丸にする上で欠かせない重要な活動だ。考えなさい。そして君の上司とすり合わせて一致させなさい。
そしてそれをことあるごとに語りなさい。チームのメンバーの腹に落ちる共通の目的になるまで。

■自ら高い目標を掲げ、メンバーにもそれを求めなさい
高い目標を掲げていれば、例え達成できなくても成長できる。人も組織も掲げた目標までしか成長できない。リーダーは自ら高い目標を掲げ、メンバーにも自ら高い目標を掲げることを求めなさい。そして最後まであきらめずにそれを追いかけなさい。それが自分とメンバーを成長させてくれる。

■最後まであきらめるな、あきらめさせるな
審判がゲームセットと宣告するまでは何が起きるかわからない。
うまくいっているなら油断するな。
うまくいっていないならあきらめるな。
それは自分だけでなく、メンバーにも最後まで求める。
うまくいっているなら油断させるな。
うまくいっていないならあきらめさせるな。

3. 信頼される人になる

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■エラい人にはなるな、立派な人になれ
管理職の重要な職務は判断することだ。合理的に考えて100対0とか90対10、80対20だったら判断はいらない。合理的に答えが出るからだ。判断もいらない代わり、誰がやっても同じ答えが出る。君である必要はない。
問題は70対30、60対40、50対50の時の判断だ。合理的に答えが出ない。
そこに結論を出すのが「管理職の判断」だ。
合理的でない判断、すなわち理不尽な理由で部下に動いてもらわなければならない。
その時、地位と権力で言うことを聞かせることもできる。しかしそれをやり始めたら、部下の信頼を失い、権力がなければ人を動かすことができないリーダーになってしまう。
理不尽な理由で動いてくれるのは「○○さんが言うならやります」の一言だ。
一朝一夕にはこうはならない。日々の信頼の積み重ねでしかここには到達できない。
くれぐれも「エラい人」にはなるな。厳しいことを言っても、時に理不尽なことを言ってもみんなから慕われ、尊敬される「立派な人」になりなさい。


■部下に弱みを見せることを恐れるな
君は神ではない。得手もあれば不得手もある。ところが管理職になりたての時は、えてしてマネージャーは完璧でなければならないという錯覚に陥るものだ。
メンバーの目線に立ってみよう。知ったかぶりをして判断を誤る上司と、分からないから教えてくれ、一緒に考えようと率直に言う上司、どちらの上司が信頼できるだろうか。
大切なことは、管理職の仕事の目的は保身ではなく、課のミッション達成だということだ。プライドが課のミッション達成の障害になるなら、捨ててしまえ。その方が君に対する周囲の信頼は高まるのだ。

■報告したくなる人になりなさい
部下にはホウレンソウを求める。だが「報告しろ」と言ったら報告するようになるだろうか。君自身がメンバーから「報告したいと思われる人」になっていない限り、メンバーは報告を忘れる。だから報告したくなる人になりなさい。
いい時も悪い時も報告したいと思われる人とはどんな人なのか、考えなさい。
そうなれるように努力しなさい。
何も言わなくても部下が報告してくれるようになった時、それは自分が人間として成長した証だ。

■手柄は部下に、責任は自分に
成功したら手柄は部下のもの。その部下だけではなく、他のメンバーにも部下の手柄として伝えなさい。他の課にも、君の上司にも伝えるのだ。
君がそう思っているだけでは「手柄」にはならない。周囲の人々にも伝え、周囲の人々が祝福してくれて初めて部下の「手柄」になるのだ。

失敗したら責任は自分が取る。たとえその部下に任せた仕事であっても、任せた自分、フォローしきれなかった自分に責任がある。
その部下本人に対しては責任を追及しなさい。それが彼のためでもある。
しかし他のメンバーや上司に対しては君が潔く責任を取りなさい。
部下に仕事を任せることにおいて、それがスジだ。


■これまでは上司が自分を育ててくれた。これからは部下が自分を育ててくれる。
部下の言動や行動は、課長の言動や行動の鏡だ。部下が思うように動いてくれないなら、それは自分のマネジメントのせいだ。部下がネガティブな発言をするなら、それは自分のリーダーシップのせいだ。
部下の顔をよく見なさい。部下の声に耳を傾けなさい。しかし決して部下に迎合してはならない。
部下の感情を汲み取り、意見には耳を傾けるが、迎合しない。部下は居心地よく過ごしているが、課の成果が出なかったら価値はない。課の成果は出たが、部下が疲弊し、成長していなかったら管理職失格だ。
これは苦しいことだ。どうしたら両立できるのか、必死で考えなさい。思ったことをやってみなさい。そして部下の顔を見なさい。言葉に耳を傾けなさい。やってみたことの結果はそこに映し出されている。

■信頼される人になりなさい
難しいようだが、子どもの頃、親や先生に教わったことを日々実行することだ。
嘘をつかない。逃げない。ありがとうと言う。ごめんなさいと言う。思いやりを持つ。人として間違ったことをしない。約束を守る。義理堅い。筋を通す。えらぶらない。易きに流れない。誘惑に負けない。強く生きる・・・。この中の3つくらいを選んで、どんなことがあってもそれだけは守ると誓いなさい。それがあなたの信念だ。


4. 人を動かす

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■やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、褒めてやらねば人は動かじ
連合艦隊司令長官山本五十六元帥の有名な言葉だ。今から50年前、現在のリクルートマネージメントソリューションズの研究職たちが、多くの企業の管理職を対象に調査研究した結果、リーダーシップについては4つの機能から構成されているという結論に達した。当時の研究者たちは山本五十六がその4つの要素を見事にこの言葉で言っていたことに驚いたそうだ。
この言葉を大切にしなさい。知っているだけでなく、実践してわかるようになること。わかったらできるようになること。これが無意識にできる、すなわち身につくまで試行錯誤しなさい。

■どんなに忙しくても、メンバーの目を見て話せ
忙しい時に限って、メンバーは「ちょっといいですか?」と相談に来る。そんな時、パソコンのモニターを見ながら話してないか?それだけで人は、自分は軽んじられていると感じ、君は信頼を失う。いや、実際に君はそのメンバーを軽んじているからそんなことをするのだ。
椅子の向きを変えてメンバーの方を向き、目を見て話を聞く。内容を聞いて即答できるなら即答。できないなら、「今は忙しいから、明日以降の時間を押さえてくれ」と言えばいい。ただこれだけのことで、メンバーは自分の存在を認め、大切にされていると感じる。
忙しい?椅子の向きを変えて、相手の目を見て、時間を取ってくれと言うのに30秒もかからないだろう?忙しくてもメンバーを大切にすることはできる。

■指示するときは必ず目的から話す
どんな仕事にも目的がある。指示をするときは必ず目的から話しなさい。
目的を言わずに細かな指示を出したのではメンバーは君の言うことしかできない。その上、細かいところで齟齬が生じる。
目的さえわかってくれれば方法は任せてもかまわない。目的がわかっていれば、メンバーはどうやったらうまくいくかを考えることができる。「任せる」とは方法を任せるのだ。君が想定していた方法とは異なるかもしれないが、大きく外れた結果にはならない。自分でやる以上の成果が出て気付かされることも日常茶飯事だ。
一を聞いて十を知るという言葉がある。どれも同じ十ではない。目的の「一」を聞けば、残りの九は考えられると言っているのだ。


■メンバーがいてくれることに感謝しなさい
あなたがマネージャー、リーダーでいられることの最低条件は何だろう。
知識でも、スキルでも、意欲でもない。最低限の条件は「メンバーがいてくれること」だ。
どんなにマネジメントスキルがあっても、どんなにリーダーシップがあっても、メンバーがいてくれなかったらマネージャーにもリーダーにもなれない。
メンバーがいてくれることに感謝しなさい。
そしてその感謝の気持ちを持ってメンバーに接しなさい。
その感謝の気持ちから愛が生まれる。
メンバーを愛するようになれば、自ずと行動が変わる。
その行動がメンバーを動かす。

■叱るために叱るのではなく、愛するあまり叱りなさい
怒るのではなく叱れと言う。課長である自分の立場に傷がつくと思うと怒ってしまう。それが保身だ。
その部下のためを思って厳しく言うことを叱ると言う。
ではどんなときに叱ればいいのか?
愛すればいい。部下を愛していれば、こう生きて欲しい、こう成長して欲しいと願うようになる。部下がその願いと違う行動を取ったら腹が立つ。
同じ厳しい言葉でも、保身のためならパワハラだと感じる。愛するあまりならありがたいと思うものだ。



5. 人を育てる

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■目的意識と当事者意識
どんな職種、どんな職場、どんなレイヤーでも、仕事の基本中の基本は目的意識と当事者意識だ。この2つを身につけさせれば、部下は自律的・自発的に仕事をし、持続的に成長するようになる。

仕事とは、目的を捉え、その目的を最も効果的且つ効率的に達成する方法を考え、実行することだ。言ってみれば目的は仕事の羅針盤だ。目的意識のない仕事は羅針盤のない航海になる。
目的意識を身につけさせるためには、あらゆる仕事において目的を明確に共有することだ。
・仕事を部下に発注するときは、必ずはじめに目的を話し、理解できたか確認する。
・部下が仕事の相談にきたら、最初に「目的はなんだ?」と問う。
・部下が資料を作ってきて最初のページに目的が書いてなかったら後は読まずに突き返す。
・会議や打ち合わせの冒頭で目的を確認しあう。
これらを君の癖にすることだ。

当事者意識は人を本気で仕事に取り組ませる。
当事者意識を身につけさせるためには、目的達成の方法を部下に考えさせる。目的が共有できたら、原則とし方法論については指示せず、部下に考えさせる。
リクルートの「お前はどうしたいんだ?」、HONDAの「お前はどう思うんだ?」は方法論についての問いだ。
この時に重要な心構えは、既成概念のある自分よりも彼/彼女の方が効果的・効率的な方法を考えつくかもしれない、そうであればそれを積極的に採用しようという考え方だ。
部下が自分の考えを述べたら否定しない。対等に議論する。その時には自分の経験を語る。正解ではない。経験を語るのだ。部下の新鮮な発案と自分の経験を並べた上で、最も良いと思われる方法をともに考えて導き出す。
結論を共有できたら、「私が責任を持つから、やってみなさい」と仕事を任せる。部下が、「上司のアドバイスはもらったが、自分がやりたいと言った方法だ」と認識していることが重要だ。
仕事が始まったら支援する。取り返せる小さな失敗はさせて、その都度フィードバックする。取り返しのつかない大きな失敗は未然に介入して防ぎ、なぜ介入したかを話して聞かせる。
目的・目標を達成したら、「君がやったからこそこの結果が出た」と褒める。
失敗したら、「君がこれだけがんばって失敗したのだから、会社はこの方法はダメだと学習した。その分、会社は成長した」とフィードバックする。
「自分が考えた方法で結果を出した。その結果が役に立った。」これが自己実現欲求の満足に他ならない。
ここまでで分かると思うが、人を育てるのは「正解」を言うことではなく「問い」だ。


■部下の目線に降りなさい
自分に経験のある仕事であれば、メンバーより君の方ができるのは当たり前だ。部下が君と比べて仕事ができないのも当たり前。部下の方は、自分は何がわかっていないのかということすらわからない。だから部下の目線に降りて、部下の目線から見える風景を想像しなさい。そうすれば、何がわかっていないのかがわかる。それがわかったら、自分の経験を総動員して解決の道を示してあげなさい。

■メンバーのいいところ、できているところに注目しなさい。
達成率70%の部下がいる時、できない30%に目がむきがちだ。その結果、「何でこの30%ができないんだ!」というアプローチをする管理職が多い。だができない理由がわかっていれば、そのメンバーは達成できたはずだ。わからないから70%なんだ。わからないことを「何でだ」と問い詰めても答えはない。
まず、できた70%のどこが良かったのかをお互いに確認し、それを伸ばすアドバイスをしなさい。
その後に、できなかった30%について、一緒に考えてあげなさい。

■現場仕事から手を離せ
メンバーから管理職になったとき、誰もがハマるのがこれだ。それまでやっていた仕事をそのままやってしまう。それは部下の仕事を奪っていることになる。自分がいた課の管理職になっても、管理職になったことで仕事が変わったのだ。現場仕事から手を離し、管理職としての仕事をする時間を作りなさい。
部下よりも自分がやった方が早いと誰もが思う。それは部下の成長の機会を奪っている。
自分は現場仕事に手を出さない。部下に成長の機会を与えるために。
前出した山本五十六の言葉を思い出して欲しい。
やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、褒めてやらねば、人は動かじ。
最初は同行してやってみせる。
同行の後、必ず、何を目的に、なぜそうやったのかを言って聞かせる。
次は「させてみせ」なのだ。
しかし初回はそううまくはいかない。
それでもうまくいったところ、見所があると思ったところを褒める。
自分でやった方が早い。焦れる。
知りなさい。マネジメントは我慢だということを。


■任せるのと丸投げは違う
人材を育成するには仕事を任せることだ。だが丸投げでは部下を潰し、自分の信用を無くす。権限と責任と義務は正三角形だ。つまりすべて同じ大きさ。仕事を任せるとは、その一部を任せること。その一部もまた小さな正三角形になる。
その小さな正三角形は、君の正三角形から切り離されたものではなく、君の正三角形の一部なのだ。
つまり、仕事は任せても、君には責任と義務がある。
仕事を任せるとは、「最終的な責任は私が取る。君にこれを任せるから責任を持ってやってくれ」なのだ。
小さな正三角形が切り離された丸投げとは違う。
切り離されたら小さな正三角形は君の視野から消える。
君の正三角形の一部なら、気になって仕方がないから、進捗状況の報告を求める。
仕事の任せ方を身につけなさい。


■部下を転落から守りなさい
内部統制の基本は性弱説だ。人間は根源的に弱いものだ。出来心を起こしたり、誘惑に負けたりする。犯罪はもちろん、社会規範にもとることをすれば、その部下は一生復帰できないほど深い淵に転落する。管理職は部下の人生を預かっているのだ。部下が間違ったことをしないように目を配りなさい。それ以前に、君自身が模範となる姿をやって見せなさい。


6. 経営と現場のリンクピンになる

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■課長に昇進した今日から、部長の視点でものを考えなさい
課長が課長の視点で考えていたら、視野が課の問題に限られ全体観を見失う。今日から部長の視点で考えなさい。高い視点から広い視界を眺めてはじめて自分の課の位置づけと解決すべき課題が理解でき、目標が納得できる。

■経営陣・部長とメンバーのリンクピンになりなさい
組織は上に行くほど視野が広くなり、視界は長期になる。
下に行くほど視野は狭くなり、視界は短期になる。
経営は5年先、10年先の戦略を考えているが、メンバーは今月の目標達成のための戦術を考えているのだ。だから経営と現場の間には必ず歪み(ひずみ)が生じる。この歪みを最適に是正するのは中間管理職の重要な職務だ。
上から降りてきた言葉をそのまま伝えたり、メンバーの声をそのまま伝えたりするのなら管理職はいらない。言葉をそのまま伝えるならICレーコーダーの方が性能は高い。
上から降りてきたことは自分の頭で考えて納得し、自分の言葉で部下に伝える。
メンバーの声はよく聴いて、決して迎合せず、経営の立場から見て間違っていると思うのならきちんと自分の言葉で説明する。経営として解決すべき問題だと思うなら、経営レベルの視座で自分の言葉にして上司に伝える。
上司に言うときは、1回や2回伝わらないからといってあきらめない。
その背中を部下は見ている。

以上です。
みなさんの参考になれば幸甚です。
またご意見、ご感想をお寄せいたけると大変ありがたく思います。

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